Sweet Valentine!



2月14日―それはバレンタイン。愛する人に気持ちを伝える日。


13日 PM22:00頃

「はーるーかーさん!明日は予定ないですよね?」
「なんだ基寿…。随分と浮れているな。明日は普通に仕事だろ?」
「え?休みでは??」
「最初はな。でも、篠井が『変わってくれませんか?』って言うから。明日の休みと明後日の休みを変わったんだ。言ってなかったっけ?」
石川は至極当然。とばかりに言ってくる…。
初めて聞いた岩瀬は
「そんな〜。…」
あからさまにショボクレタ様子でカレンダーをイジイジしている…。
体の大きい岩瀬がカレンダーにいじける図… 余り見ていて楽しい光景ではないが…
石川は吹き出しそうになるのを堪えつつ…。
「何だ?用事でもあったのか?だったらお前一人でも休んで良いぞ?」
「いえ!!用事はありません!悠さんを一人で出勤なんて…!一緒に仕事します!!」
岩瀬は勢い込んでそう答えた。
そして、14日は仕事となったのだった―



14日 AM 8:00

「―以上が今日の予定だ。変更があれば各班長からの指示に従え。解散!」
「「「はい」」」

朝礼が終わり石川が一息ついた時。西脇が寄って来てコッソリ石川に耳打ちした。
そして、石川もヒソヒソと西脇に答えている…。
ソレを見た岩瀬は…
『あーーー!!またコッソリ俺の反応を見て楽しんでる!西脇さん…意地悪いなー。…』
と何とか顔が引きつるのを堪え… 2人の話し合い?が終わるのを待った。


14日 PM12:30

昼食をとる為に食堂へ向かうと…
浅野が石川を呼び止めて話しかけている。
『珍しいな…』
そう思いつつ石川の近くに行くと、岩瀬に気付いた浅野が
「じゃあ、隊長。また後で。」
そう言って厨房の中へと消えていった。
「…何だったんですか?浅野…」
不思議そうに聞くと。石川はチョット笑って
「たいした事じゃないよ。さあ、ご飯ご飯。」
そう答えて席へと向かう…。
はぐらかされたなー。と思うのだが… 石川の様子が何だか楽しそうなのでそのままにしておく事にした。
―もしかして俺、ハミゴにされてる?―


14日 PM17:30

「じゃあ、上がろうか。岩瀬」
「はい。」
「皆、お疲れ様。」
「「「お疲れ様です。」」」

今日も何事もなく定時に上がり、部屋へと戻っていると…
「ゴメン。岩瀬…先に帰っていてくれるか?」
「石川さん? 何処に行くんですか?」
「あぁ…チョット西脇に言い忘れたことがあって…」
そう言って石川は言葉を濁す… 
あきらかに挙動不審なんだけれど…。岩瀬は苦笑して
「はい。じゃあ、俺はアレクの所に寄ってから部屋へ帰ります。帰ったら連絡ください。」
「そうか、分かった。じゃあ、後で。」
と、石川は何処かへ駆け出してしまった…。
ポツネンと岩瀬が残され…
溜め息をついてアレクの所へと向かったのだった―


14日 PM19:30 -岩瀬-

「だから。いちいち俺の所へ愚痴を言いに来るな!」
「アレクしか愚痴れないんだよ…。」
「う…。それは分かるけど…まぁ、石川さんの事だし?そんなに心配しなくても…ネ?」
アレクは岩瀬の愚痴を2時間延々と聞かされている…
『俺は折角の休みをコイツの愚痴に付き合うために使っているのか…』
何時もは呆れるぐらい前向きな岩瀬だが、石川の事になると驚くぐらい後ろ向きになる…
『以前じゃ、考えられないな…』
アレクは岩瀬の変化が喜ばしいことだと思っている。
だから2時間もの愚痴にも付き合えるのだ。
―恋は盲目―
まさしくソレを地で行っている親友にアレクは苦笑を禁じえない。
「あぁ!もうこんな時間じゃないか!!遅い…悠さんに何かあったんじゃ?」
「…落ち着けよ岩瀬…。何かあるわけないだろう?それに、もし何かあったらお前に連絡があるはずだし?」
「あぁ…そうだな…。俺ちょっと部屋に帰ってくるよ。もしかしたら悠さん帰ってるかもしれないし…」
「そうだな。じゃ、また。愚痴なら付き合うよ。」
「…有り難う、アレク。今度奢るよ。」
「楽しみにしてるよ。」
岩瀬はアレクの思いやりに感謝しながら部屋へと急ぐ。
「…本当にどうしたんだろう…?」
石川からこんなに長く連絡がないのは珍しいことだった―


14日 PM19:30 -石川-

「岸谷、浅野忙しい時間にすまないな。」
「いえ。大丈夫ですよ。…イイカンジに出来上がりましたね。」
「そうか?」
「えぇ。美味しそうですよ!」
「浅野も有り難う。わざわざ時間外に教えてもらって…。」
「いいんですよ。俺もクロさんの作ってたし…」
「…そっか。クロウは味に煩いからな…。でも、浅野が作った物なら大丈夫だよ。」
「…だといいんですけど…」
石川に太鼓判を押された浅野は笑ってそう答える。
「そういえば、隊長。連絡しましたか?」
岸谷が石川に心配そうに聞く。
石川は時計を見て…
「マズイ!!じゃあ、有り難うな!!」
と急いで作った物を箱に仕舞い、厨房を出て行った…
岸谷と浅野は顔を見合わせ、笑いあったのだった。


14日 PM19:45

「…やっぱり帰ってない…」
岩瀬は部屋を開けて人が帰ってきた様子がないことに落胆した。
ベットの端に座り“しょぼん”と俯いて
「悠さーん…何所に行ったんですか…」
と、呟いた。 
すると、部屋のドアが開き…
「ゴメン基寿!! 連絡忘れてた!」
待っていた石川が息せき切って戻ってきた。
「悠さん!…お帰りなさい。」
今までの心配がウソのように消えていく…
「ホントにごめんな。コレ作ってたら遅くなって…」
そう言う石川の手には凄く良い匂いがする箱が―
「…何ですかソレは?」
「えーっと…。今日バレンタインだろ?だから…」
石川が持っていた箱を開けて中から取り出したのは―
出来立ての『フォンダンショコラ』だった。
「さっき、浅野に教えてもらって作ったから…。多分味は大丈夫だと思うけど… 熱いうちに食べよう?」
そう言って石川は一つを岩瀬に渡す。
岩瀬は呆然として…
「有り難うございます!!俺…凄く嬉しいです!!」
「大げさだな」
クスリ。と石川は笑う
「だって…今日がバレンタインだって忘れてるのかな…って思ってました…。ごめんなさい。」
「謝るな…。実は忘れてたんだ。で、朝、西脇が『今日はバレンタインだぞ?』って… 
 それから岸谷と浅野に頼んで厨房を借りて作って…。俺の方こそゴメンな。
 きっと基寿の事だから、何か考えてくれてたんだろうケド…無駄にして…。」
段々と俯いていく石川に岩瀬は微笑み…
「大丈夫ですよ。予定は明日に変更しましたから。俺の方こそ、有り難うございます。
 忙しかったでしょう…。仕事が終わってからコレを作ってくれたんですよね?
 それだけで嬉しいです。悠さんが俺のことを思って作ってくれたんですから…。」
そっと石川を抱きしめ囁く―
「さあ。コレって温かいうちに食べるヤツですよね?急いで食べないと!」
石川から受け取ったケーキをパクリと食べる。と。
中から蕩けたチョコが出てきて…
「…おいひいでふ(美味しいです。)…アツッ…」
「基寿…急ぎすぎ……あつっ…」
つられて石川も食べた。

そして―
2人で熱々のケーキを食べて 笑いあったのだった―

Happy Valentine!

夜へ行く?


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…岩瀬が何だか可笑しな子に…(苦笑)
折角のバレンタインデーなので、頑張ってみたんですが…
悠さんの手作りケーキ!食べたいですよね!!

06.02.12

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